きょうおばあちゃんが死んだ。
おばあちゃんはちいさな銀のつぶし器でジュースを作ってくれた。
すっぱい果汁にたくさん砂糖をまぜたおいしいジュースだった。
おばあちゃんは裁縫と編み物がとくいで、人形をなんこも作って、その服もたくさんこしらえていた。あまりにもよく出来ているので、ほんとうにおばあちゃんが作ったとは最後までよく信じていなかった。
毛糸をたっぷり使って髪の毛が付けられていたので、三つ編みをなんぼんも作って遊ぶことが出来た。
おばあちゃんは親族のなかで一番優しく、でもすこし弱そうだった。おじいちゃんに怒られたとき守ってくれた。おじいちゃんは私が8さいくらいの時に死んだ。私は当時ひとの死とかの意味をよくわかっていなかった。火葬場でわたしの隣に立っていたおばあちゃんが「おじいちゃんが焼かれちゃう・・・」とつぶやいたのをきいてすこし変な気持ちになったのだけをおぼえている。
おばあちゃんはとてもかわいらしい人で、ほっぺたがつやつやしていた。
白髪混じりの髪の毛をうしろで一つ結びにしていた。持ち物も全部かわいかった。
耳が遠くなり、歩くのが遅くなり、リウマチにやられて、施設に入れられた。
晩年のおばあちゃんはほとんど動物みたいだった。少なくとも人間的ではなかった。